第1話「階段」
新しい街に引っ越して来た俺は早速、階段を探しに行った。
俺の一家はみんな超能力者(エスパー)で、まわりに能力がバレるたびに引っ越しをしている。
そして俺は引っ越しをするたびに、その街の公園や神社に行き、階段を探す。
理由は特にない。
ただ階段の段数を数えるのが好きなだけだ。
この街にも公園に大きな階段があった。
いつものように階段をのぼりながら段数を数える。
「・・・・96、97、98、99、100。ちょうど100段か!!」
その時、いきなり知らない女の子が話しかけてきた。
まどが「うそー!99段しかないはずよ!!」
俺 「いや100段だ。ちゃんと数えた。」
まどが「違うわ、99段よ!」
俺 「では間をとって99.75段にしよう。」
まどが「99.5段じゃないの?」
俺 「俺のデータの方が信用が置ける。だから99.75段だ。」
・・・こうして、ささいな事から口論が始まった。
別にどうでもよい事なのかもしれないが、俺も全国を渡り歩いた階段マニアとしては素人に負けるわけにはいかない。
結局、1時間以上言い争いを続けた後、殴り合いのケンカになった。
決して手加減したつもりはないのだが、女相手にボコボコにされた。
後で聞いた話では相手は不良だったらしい。勝てないわけだ。
とにかく、鼻血が止まらずに、鼻を押さえながら大泣きしている俺を尻目に、彼女は帽子を拾って帰って行った。
奴は後で必ず超能力で殺すとして、重要なのは階段の段数だ。
どちらが正しいのかもう一度数え直してみる事にした。
99段だった。
しかしこのまま引き下がるわけにはいかないので、もう一度数えてみると今度は102段だった。
平均すると、さっきより少し100段に近付いたものの、2段もオーバーしてしまったので、今度は1段とばしにのぼりながら数えてみる事にした。
97段だった。
もう夕方になっていたが、満足な数値が得られるまでやめるわけにはいかない。
その後も色々とやり方を変えて数えてみた。
スキップをしながら数えた場合 99段
逆立ちをしながら数えた場合 96段
口笛を吹きながら数えた場合 103段
よそ見をしながら数えた場合 98段
鼻血を拭きながら数えた場合 101段
しかしどれも満足な結果は得られず意気消沈したが、まだあきらめきれなかったので、最後にもう一度、普通に数えてみる事にした。
86段だった。
その時ようやく俺は自分の頭がおかしかった事に気付いた。
――完――
ご声援、ありがとうございました!!
次回作にご期待下さい!!!