ロトの勇者 ぶちょうの憂鬱 〜『ゆううつ』って書けますか?〜 |
ジャンル | ドラクエ関連 |
作者 | ぱかぽこ さん | |
投稿日 | 2001.5/10.20:04 | |
前書き:続けようか続けまいか、それが問題だ。 |
オリジナル。 題:ロトの勇者 ぶちょうの憂鬱 〜『ゆううつ』って書けますか?〜 完結編 2 ぱかぽこ 作 私は翌日、昼を過ぎてからルイーダの酒場に行った。ブローズはまだ寝ているだろうか。彼は、酒を飲んだ次の日はひどい二日酔いになるので、昼にならないと起き上がれないはずだ。 酒場のカウンターでは、ルイーダが不機嫌そうな顔をして、台帳を見ていた。 「こんにちは、ルイーダさん。昨日はありがとうございました。」 ルイーダはちらりと私を一瞥し、酒場の2階を指差して言った。 「彼は2階よ。」 相当機嫌が悪い。何かあったのだろうか? 「・・・何かありました?」 「何よ、あの男は!!!」 ルイーダは音を立てて台帳を閉じ、昨日の出来事をまくし立てた。 「えぇ、昨日あいつの部屋に行ったわよ。下心だってあったわ!抱き寄せられて、耳元で『君の匂いに溺れそうだ』なーーーんて言われたからこっちだって『もういいかも』って思ったけど・・・。あいつったら、私の胸に顔をうずめて、なんて言ったと思う?」 ルイーダは私から目を逸らせようとしない。私はぎこちなく笑った。 「きーーーーっ!!!あの男はねぇ、『あぁ、芳醇なミルクの香り・・・。最高のホルスタインだ・・・』って言ったのよ!!!あの時付けてたのはバラの香水よ!コケにされるにもほどがあるわ!」 私は最高に脱力した。どう弁解したものか、とりあえず今のルイーダには何を言っても聞いてはもらえないだろう。それとも、本人に弁解してもらおうか・・・。どちらにしろ、ブローズはここに居てはいけない。 「・・・ルイーダさん、ブローズ引き取るから・・・。」 「さっさと持っていってちょうだい!今朝なんか早くから外で稽古始めちゃって、ものすごくメイワクなのよ!出入り禁止にしようかしら!」 「・・・?彼、もう起きているんですか?」 「そうよ!朝食なんか二人分も食べたわよ。」 私は再度ルイーダに礼を言い、2階へと急いだ。ルイーダが何か叫んだようだったが、私にはよく聞こえなかった。 昨日彼を運び込んだ部屋のドアは、僅かに開いていた。中からは布の擦れる音と、剣で空を切る音がした。私はそっとドアを開けた。 そして、目の前には、剣の切っ先、があった。その向こうに、私を見上げるようにして、鋭い目、があった。短刀のような目を縁取るように、黒い、黒い塊が私の足元に、あった。全身の産毛が逆立ったようで、私は声も出なかった。 その塊は私と目があうと、するすると人型をとった。私に突きつけた剣をゆっくりと下ろし、ほっとため息をついた。ブローズだった。 「・・・ごめんな。ちょっと癖が抜けなくて・・・。」 まだ固まったままの私に向かって、ブローズはすまなさそうに微笑んだ。剣をさやに戻して壁に立てかけ、私には椅子を勧めてブローズはベッドに腰掛けた。私はぎこちなく椅子に座り、ブローズに問い掛けた。 「お酒、大丈夫なの?」 「・・・あぁ、鍛えられたんだ。王様にね。おまえが居なくなった後、毎日宴会でさ、それに『一気飲み大会』っていうのがあるんだよ。ビリは優勝者のいうことを聞かなくちゃいけないって言うルールでね、結構あくどいんだな、これが。皆酔っぱらってるからさ、何でもアリなんだよ。王様のづらを捕ってこいとか、キングスライムを持って来いとか・・・。リュウはちゃんと人並みだし、ロキなんかは『ざる』だからさ、俺も強くなるしかなかったな。」 ブローズはそう言って、今ではこの通りだと肩をすくめた。そして私は、扉を開けたときのブローズの様子が気になった。彼のあんなに鋭い眼差しを、私は初めて見た。 「癖って・・・、一体どうしたの?」 「・・・うん。・・・ラダトームにいた時にさ、四六時中狙われてしまってさ、・・・あの王女様に・・・。一日中兵士と格闘。兵士達も俺を連れてこないと、色々とやばくなるから必死でね。それ以来、背後とられそうになると、体が反応してしまうんだ。もちろん、威嚇の為だからな。」 「そっか・・・。」 ブローズの言葉が少ない分(私のせいでそうなってしまったからだろう)、彼らがどれだけ大変な目に遭ってきたのか、私は否応もなく思い知らされた。私が黙ってラダトームを後にしなければ、ここまで酷く皆にしわ寄せが行くことはなかったかもしれない。今になって、あのころの私の浅はかさが、悔やまれる。ゾーマを倒し、平和になった世界に浮かれていた皆へ、別れたいとは言えなかった。・・・そうだ、母が待っているというのは、ただの言い訳に過ぎなかった。「もう帰れないから、アレフガルドで暮らせ。」という王の言葉にどうしても従えなかった。自分の未来を、他人が決めることに抵抗を感じた。それが王であっても、むしろ王であるからこそ、私はアリアハンに、母の元に帰りたかった。だから私は世間の求める勇者としてでなく、ただの母の娘として暮らしていきたくなったのだろうか。その単なる私の我が儘のせいで、仲間が辛い目にあっていた時に、私はアリアハンで何をするでもなく、毎日淡々と過ごしていたのだ。そして、ブローズは強く大きくなり、私はあの頃のまま何も変わらない。ただの子供だ。アレフガルドから逃げて、母から逃げて、・・・今度は何から逃げる? ・・・私は彼らに、どう償えば良いのだろうか?どうすれば、許してもらえるだろうか・・・? 私が気落ちしているように見えたのか、ブローズは勤めて明るくいった。 「あの頃のことは、悪いことばっかりじゃないよ。たぶん俺、強くなってる。いろんな意味で鍛えられたと思うし、まあちょっと強引なこともあったけど・・・。だからおまえが気にすることない。」 「・・・ごめん、ブローズ・・・」 私はそれしか言えなかった。他に言葉が見つからなかった。 「わわっ、ほら、泣くなって。・・・ああああ、俺たちは大丈夫だからさ!だからな、な、わわわわ・・・ああああ・・・・・・まいったなぁ。」 ここで泣くのは卑怯だと思ったが、どうしても涙が止まらなかった。そんな私の背中を、ブローズは優しく撫でていてくれた。その温かさが余計に切なくて、嬉しくて、私はブローズの手を握った。その手は大きく、温かかった。 私は初めて、彼の中に男性を意識した。 完結編 3 に続く @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ どうなっちゃうんでしょう。ああなっちゃうんでしょうか。いやいや、どうでしょう。なんでしょう。ただ今AM1:44。頭の中は眠っています。意識がもうろうと・・・して・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ |