ロトの勇者 ぶちょうの憂鬱
〜『ゆううつ』って書けますか?〜
ジャンル ドラクエ関連
作者 ぱかぽこ さん
投稿日 2003.8/19.00:41
前書き:人生色々。男も色々・・・。








  題:ロトの勇者 ぶちょうの憂鬱  〜『ゆううつ』って書けますか?〜  根因編 1


                                       ぱかぽこ 作



 昔から、ラダトーム地方に伝わる伝説があった。
 その本を開きしもの、永遠の命を得ん。それが形を成さぬ間は。
 今から何百年も前に、ただ一度、その本はこの世にあり、一人の魔法使いが永久の命を手に入れたと、口伝いに囁かれていた。それ以来、その本を見た者が無かったので、真偽の程は定かでなかった。本を開けば永久の命を得られるというのは理解できるのだか、その後の形を成さぬ間というのがよくわからない。一度開くと形を変えるのか、消えてなくなるのか、見た者がない以上あくまでも伝説の域を出なかった。まあ、良くある話だが、魔法を極めんとした者達は、競ってその本とやらを探したものさ。その時のあたしも、例外じゃなかった。いや、誰よりも強く、その本を欲していた。
 あたしはその時、ラダトームにいた。ラダトームこそあたしの故郷であり、いるべき所だった。この国を守ることが、あたしの使命だった。その為の力を、今以上の力を、あたしは手に入れようと日々努めていた。
 あたしは、先々代ラダトーム王の娘、前ラダトーム王妃だった。

 ラダトーム王の家系は、昔から人より抜きん出た能力を備えて生まれてくることが多かった。兵20人に匹敵するほど剣技に優れた者、全ての魔法を習得し新たに魔法を構成した者、物心つく頃より国を治めることに長けた者、この世の薬草に精通し新しい薬効を持つ植物を生み出した者など、いずれの場合も国やそこに暮らす人のために力を注いでいた。
 あたしはその中でも、魔力に長けていた。6歳になる頃には攻撃魔法、回復魔法、補助魔法の全てを自分の物にし、そこから15になる頃まで魔法の効果を道具に込める研究を行い、現在までは魔法の効果を与える薬草の調合の研究をしている。あの媚薬もそうさ、メダパニ茸をベースにメラの葉とラリホーの実を効かせてある。おや?それが何の役に立つのかって顔をしているね。媚薬は、薬草類の売上高1位の傷薬に次ぐ売上があるんだよ。値段は最低でも傷薬の約10倍、出荷量は他の薬草よりずっと少ないが、単価が高いからね。優良な特産品になるのさ。
 話がそれたね。そう、あたしには息子が二人と、娘が一人いた。上の息子は当時10歳、下の息子は生後1ヶ月、娘は5歳になったばかりだった。上の息子は剣術に優れ、いずれは軍を率いて国の防衛を担うことになっていた。下のは生まれたばかりだったからね、どうなるか楽しみなところだったが、あたしに似て賢そうな顔をしていたから、多分賢者か良い統治者になっていたと思うよ。そして娘は、特に何かに秀でるということは無かった。魔法は偶然に頼ることが多かったし、治学については、教科書を眺めているだけで全く頭に入っていなかった。王家の者として生を受けても、秀でた能力を持って生まれてくるとは限らなかったから、たまにはこういうこともあろうかと、みな娘については期待していなかった。
 けれど、あの時あたし達が生きていられたのは、あの子の秘められた力に寄るところが大きい。
 あの時、あたしはラダトームにいた。胸が締め付けられるほど、幸せだった。

 扉を控えめにたたく音がした。部屋の主は見ていた書物から顔を上げずに、入室を促した。
 「ここにいらしたのですか、母上!」
 頬を上気させ、少し癖のある黒髪を乱しながら、少年が入ってきた。その少年は、明らかに安堵の表情を浮かべ、部屋の主に近づいた。
 「おや、あたしは最初からここにいたよ。」
 部屋の主は、書物から少年へと視線を転じ、答えた。
 「棚の陰に隠れて見えなかったのでしょうか?…でも僕は声を掛けたし…。」
 「あたしが返事をした頃には、もう扉は閉まっていたよ。」
 「何だ、じゃあ賭は僕の勝ちだ。」
 部屋の主は片眉を上げて、先を促した。しまったと心の中で舌打ちし、少年は少々気まずげに続けた。
 「オルファと…、オルファがおやつを賭けたんだ。その、母上のいる場所で。」
 「…正確にお言い。」
 少年はますます小さな声で、答えた。
 「…オルファが、僕のおやつを欲しがったんだ。だから、母上が今どこにいるか当たった方が、明日のおやつを好きなだけ食べられることにしようって…。」
 少年の声は、最後の方はほとんど聞き取れなくなっていた。部屋の主はため息をつき、書物を棚に戻した。
 「随分と大人げないね、オルテガ。一体幾つにおなりだい?」
 「十歳です…。」
 「しかも、実の母を賭の対象にするとは何事だね?…わかるだろ?」
 「はい、…申し訳ありませんでした。」
 こんな時は、すぐに謝ってしまうのが最良の選択肢だと、少年は今までの経験上良く知っていた。
 「あれも良く動くから、お腹が空くのだろう。料理番には夕食に障らないよう間食を増やすように言っておくから、今後食べ物を遊びに使わないこと。いいね。」
 「…はい。」
 うなだれた少年を前にして、またいつもの罪悪感が頭をもたげた。彼らは、ほんの遊びのつもりで賭をしたのだろう。悪気があったわけではないのだ。…少し言い過ぎただろうか。
 あれこれ逡巡していると、扉が音をたてて開かれた。少女が飛び込んできた。
 「お兄さま、私の勝ちよ!あの時お母様は薬草園にいたんですって!…ととと、何でもありませんわ、お母様。」
 愛想良く微笑む少女に、部屋の主は天井を仰ぎ、少年は更に深くうなだれた。
 「こちらにおいで、オルファ。」

 何気ない、いつもの風景だった。二人が大人になって、親の元を巣立つその日までは、変わらずそこに流れるだろう時間だった。
 なぜ、あの時あの場所に、それがあったのかはわからない。なぜなら、今まで幾度と無く見てきた場所だったからだ。ほんの一瞬の瞬きの間に、それはそこに姿を現した。
 黒とも藍ともとれる色合いに、まず心を引かれた。その色は、ビロードの光沢に良く似ていた。目の前に並ぶどの書物より、輝いて見えた。厚さは人差し指の長さの半分ほどで、他と大差無い。専門書の並ぶこの書庫では、少々薄い部類に入るだろう。半分以上が自ら買い求めたものや、書き記したものであったので、未だ自分の知らない書物があったことに驚いた。以前誰かがここから持ち出し、それっきりにしていたことを思い出して、こっそり戻しておいたのだろうか。
 考えても附に落ちないので、とりあえず手に取ってみた。
 装丁のそれはやはりビロードで、良く見ると、闇夜のような漆黒だった。題はなく、作者も記載されてはいなかった。ただ、銀色の糸で、蔦のような刺繍が施されていた。初めて手に取ったのに、妙に手に馴染むのが気味悪かった。
 書物が意志を持って、持ち主に吸い付いてくる。
 そんなはずはと、自嘲気味に笑っても、とてもページを開く気にはなれなかった。
 投げ捨てるようにして、あたしは本を棚に戻した。





    根因編 2 に続く







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早春のある日(これを書いている時期がバレバレ)、起きると喉が泣けるほど痛かった。検温してみると37.9度。ままま、ましやSARS!?
恐怖を胸に病院に行くと、待ち時間1アワー、診察2ミニッツ、会計まで10ミニッツ。
ドクターα「今日はどうしたの?」
ぱかぽこ「のどがいたくで、ねつもあっで・・・。」
ドクターα「あ、そう。じゃあ口あけて。声出して。」
ぱかぽこ「あ゛――――――――。」
ドクターα「あー、真っ赤だね。うがい薬と抗生物質4日分出しとくから。よくうがいしてね。それでも治らなかったらまた来てね。じゃあお大事に。」
ぱかぽこ(聴診器すら当ててもらえない・・・。)
日本の医療の行く末が気になります。喉の痛みは、気管支の方に移動しつつあります。でも悔しいので行かないわ。自力で何とかしてやる。

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