ロトの勇者 ぶちょうの憂鬱 〜『ゆううつ』って書けますか?〜 |
ジャンル | ドラクエ関連 |
作者 | ぱかぽこ さん | |
投稿日 | 2003.8/19.00:41 | |
前書き:すごい久しぶり。みんな帰ってくるかなあ・・・。 |
題:ロトの勇者 ぶちょうの憂鬱 〜『ゆううつ』って書けますか?〜 邂逅編 2 ぱかぽこ 作 「ところで、そのマーキユさんがいる砂漠は、どこにあるんだ?」 夢で見た現実のことをブローズに話し、そして彼は開口一番、この問いを投げかけた。一番重要で、当り前のブローズの問いかけに、私は答えることが出来なかった。 「・・・砂漠といえば、アッサラームからイシスのある、あのあたりが有名だろうけど、他の所にも無い訳じゃないからなあ。しかも、夏の間じゃないと、その扉は開かないんだよなあ。・・・どうしようか。」 ブローズは殆ど独り言のように、呟いた。そして私は・・・。 「・・・どうしよう。」 それに気がついたのは、ロマリアで宿を取った時だった。 アリアハンを出発した日の夜は、レーベで休んだ。そのかわり、翌日は朝早くから旅路を急いでいた。その日のうちに、ロマリアまではたどり着きたかった。でないと、野宿することになってしまう。 その強行軍は、さすがに応えた。久しぶりに長く歩いた私の足には、何箇所も靴擦れができた。ロマリアの城が遠くのほうに見えた時には思わず涙が出そうになった。最後は意識が朦朧としていたので、ロマリアの城門をくぐり、宿屋にたどり着いた時のことは良く憶えていない。 そして、宿で軽く食事を取り、足を揉み解して、私はそのままベッドに倒れこんだ、と思う。次に目を開けた時、外は既に明るかった。そして、ブローズの姿はなかった。 私はベッドを抜け出し、身支度を整えようとして、ふくらはぎと足の裏に巻かれた包帯に気がついた。仄かに薬草の匂いがした。・・・足が軽い。 ブローズにここまでされていても、意識が戻らなかったのは、何とも情けなかった。 包帯を解くと、すり潰された薬草が、すっかり干からびて茶色く変色し、皮膚にへばり付いていた。指でなぞると、薬草の粕はほろほろと簡単に取れた。靴擦れはきれいに無くなっていた。 手早く服を着替えて、私は食堂へと向かった。途中洗面所で顔を洗い、寝癖を直した。 水音に気付いてか、宿屋の主人が姿を見せた。そして私を食堂へと案内した。 「おはようございます。よく休まれましたか?お連れの方が食堂でお待ちですよ。いやー、凄いですね、あの人は。昨晩遅くまで起きてらっしゃったはずなのに、私よりも早くに起きてトレーニングなさってましたからね。」 食堂には、ブローズの他に数人の宿泊客がいた。彼らは皆知り合いのようで、賑やかに談笑していた。その中でブローズは、ちびちびとお茶をすすりながら、窓の外を眺めていた。 「今、食事をお持ちしますね。」 そう私に言い置いて、主人は厨房へ入っていった。 その声にブローズは振り向いて、私を認め、破顔した。 「おはよう。体の調子はどう?」 「おはよう。薬草が凄く効いたみたい。足がとっても軽いの。ありがとう。」 「それはよかった、どういたしまして。」 「・・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・。」 会話が続かない。他の客の賑やかな声がやけに大きく聞こえていた。 不意にブローズが口を開いた。 「俺さ、行きたい所があるんだ。」 「え、どこ?」 「・・・本当は今すぐにでも行きたいんだけど、ちょっと態勢を整えてからじゃないと、無事に帰ってこれそうにないからな・・・。」 「そっか、そうだよね。」 ラダトームに残してきたかけがえのない仲間。懐かしい顔が脳裏に浮かぶ。みんなは無事だろうか。 「ぶちょうはどっか行きたい所、あるか?・・・今のうちにどこでも連れて行ってやる。なんでもいいよ、やり残したこととか有れば・・・。」 行きたい所と問われたら、今の私の中に答えは一つしかなかった。 「あ、あのね・・・。私、もしかしたら、本物になれるかもしれない。」 「・・・・・・へ?」 「うん・・・、本物の女の子に為れるかもしれないんだ。」 自身たっぷりの私の表情とは対照的に、ブローズの顔は明らかに困惑していた。 「・・・・・・・・・???どうやって?」 「あれ?・・・あ、夢の話、してなかったっけ?」 ブローズは少し考えて、うなずいた。 「・・・してない・・・。うん、知らない。」 「・・・ごめん。あのね・・・。」 そして私は夢に見た情景をブローズに話した。 話し終わった後、しばらく腕を組んで考え込んでいたブローズは、一言唸って私に問いかけた。 「ところで、そのマーキユさんがいる砂漠は、どこにあるんだ?」 私の頭の中は、その問いかけで真っ白になった。私の答えを待たずに、ブローズは一人で何かをぶつぶつと呟いていた。 情けない。アリアハンを出て、私はどこへ行くつもりだったのだろう。何処に向かって急いでいたのだろう。 結局、私は何も考えてはいなかったのだ。 これから先、ブローズについていくだけの自分の姿が何よりも鮮やかに私の脳裏に浮かんだ。 「どこへ行くにしても、まず買出しだな。・・・保存食だろ、・・・あ、薬草がもうないんだ。」 束にしてあった薬草は、私のふくらはぎの上で、干からびて消えた。今も足は驚くほど軽い。 ・・・3束くらいは常備しておこう。 ロマリアの城下町は、アリアハンのそれと、とてもよく似ている。旅の扉での交易が、過去に行われていたのかもしれない。肉のこげる匂い、菓子を焼く匂い、全ての匂いが入り混じって、町の輪郭をかたどっていた。この雰囲気は少し懐かしい。 不意に後ろ髪をひかれた。振り返ると、ブルーオーブを思わせる深く青い瞳が、私を見つめていた。5歳くらいの子供が、私の服の裾を柔らかそうな小さい手で、きゅっと握り締めていた。青い瞳とは対照的な、首に巻いた鮮やかな赤いスカーフが印象的だった。 尚も見つめる青く大きな瞳に、吸い込まれそうになりながら、私はブローズを呼んだ。 ブローズは、私の足元にしゃがみ、子供の目をのぞきこみながら話しかけた。 「どうしたの?迷子になった?お父さんとお母さんはどこにいったのかなあ?」 子供はブローズをじっと見つめ、私を指差した。 「ま、ちゅ・・・。きゅっ?・・・・・・きゃあ。」 私たちは顔を見合わせた。 「知り合い?」 「知らないよ・・・。」 私の肩から荷物が滑り落ち、足元で埃が舞った。すると、子供は荷物に寄り、紐をこじ開けて顔を突っ込み、中の匂いを嗅ぎ始めた。その姿は、何かの小動物のようだった。 「・・・ふんふん・・・・・・ふんふんふん。」 ひとしきり嗅いだ後、荷物から顔を引っこ抜いて、満足げに笑った。そして私に荷物をちゃんと持たせると、私と手をつないだ。 「きゃ?・・・いにゅっ!っっぱーーー!!!」 子供は掛け声(?)を掛けると、ものすごい速さで私を引きずりながら走り出した。呆気にとられた顔のブローズが、みるみる小さくなっていった。 「うあああああああ・・・。ブロー―――ズー―――ゥ。」 一人残されたブローズは、ただただ呆然とその場に座り込んでいた。 「・・・なんなんだ・・・。」 「よお、兄ちゃん。逃げられたなあ。」 「追いかけなくていいのかい?」 「がんばれよ。」 ブローズは、見知らぬ通りすがりの人たちに肩を叩かれて、励まされた。 そして、串焼き屋台のおじさんからは『大王イカ焼き』を、雑貨屋のおばさんからは『お化けキノコの強壮剤』を、それぞれ手渡された。ブローズは礼を言って立ち上がり、イカにかぶりついた。 「・・・こんな時でも、美味しいもんだなあ・・・。」 彼女へと続く一本の道は、みるみると人ごみに紛れて消えた。彼女が消えていった方角へ、歩き出そうとしたブローズを、呼び止める微かな声がした。 「・・・・・・はあはあはあ、・・・あんた・・・。ちょっと・・・、頼むから、・・・・・・まって・・・。」 振り返ると、ススで汚れた元々は白かった服を着て、これまたススと油とで服以上に汚れた多分白かったであろう前掛けをつけた男が、肩で激しく息をしながら、よろよろと歩いてきた。顔からは、汗がだくだくと流れていた。彼の体温がブローズの肌に熱かった。 「・・・あんた、・・・・・・あのこどもの、連れだろ?・・・・・・金、・・・っはらって・・・。串焼き・・・、鳥の・・・十本、只食い・・・は、いけねえよな・・・。」 目の前の風景が瞬く間に過ぎていき、気がつくと町は遥か遠くにあった。 子供は小さい森の中に入ると、やっと歩みを止めた。 足に痛みを感じて見てみると、両膝の布が破け、血がにじんでいた。 「きゅん、にょ、ちょ。まーちゅ。きゃあ。」 やはり意味不明の言葉で子供は私に話し掛け、そして私の荷物をがさごそと漁り、赤い布を取り出して、草の上に広げた。 子供は私の荷物を手に取り、赤い布の上に立った。また、あの大きな瞳で私を見つめ、小さな手を差し出した。私はその瞳に吸い込まれるようにして、再度子供の手を取った。 「きゃっ!」 子供は満足そうに笑って、空を仰いだ。見開かれた青い瞳は、さらに深く青く輝いた。 「まーーーーーーーちゅーーーぅ!!!」 掛け声と共に、一瞬で視界が虹色に染まった。周りの風景が七色ににじみ、歪んで反転した。 軽くめまいを感じて膝をついた時には、世界は闇に染まっていた。木も草も、風も鳥の囀りも、跡形もなく消えていた。 邂逅編 3 に続く @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 小動物は大好きだ。特に水生ものは一日見ていても飽きない。何を考えてるんだか解らないところが良い。 めだか1:「えさえさえっさえさえさ・・・。」 めだか2:「ええ、えさえさえさえさ・・・。」 めだか3:「???えさ?えさ?えさ?・・・。」 おまえら、餌ばっかしかよ。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ |